
この記事でわかること
- 強豪校の部活で鍛えられていたのは根性ではなく直しの速さかもしれない
- フィードバックは頻度と伝え方の両方が効いてくる
- 部活経験がなくても振り返りの仕組みは今から作れる
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会議が終わって、上司から「さっきのあれ、もうちょっとこうした方がいいよ」って言われた瞬間。なんとなく「はい」って返事して、そのまま次のタスクに頭を切り替えてしまう。よくあることだと思います。強豪校で部活をやってた同僚は、仕事の飲み込みが早い気がする。あれって根性があるからなのか、それとも別の理由があるのか。ちょっと調べてみました。
『有利』とは一体どんな指標で語られているのか
「強豪校で部活をやってた人は社会人になっても強い」って、よく聞く話です。でも、この「強い」とか「有利」って、実際は何を指しているんでしょうか。根性があるからとか、体力があるからとか、なんとなくのイメージで語られがちですが、そこをちゃんと分解してみたいんです。
医学生を対象に、練習のやり方を細かく調べた話があります。ひとくちに「頑張って練習する」と言っても、中身は計画を立てる、集中して取り組む、繰り返して見直す、自分の学び方を振り返るという4つの要素に分けられます。875人の医学生を調べたところ、テストの結果と関係が深かったのは「計画」と「集中」でした。
面白いのは「繰り返して見直す」という部分です。学年が上がるにつれて、この得点がだんだん下がっていったんです。長く練習を続けているはずなのに、見直しの熱量は落ちていく。ここに、根性論だけでは説明できない話が隠れていそうです。
強豪校で本当に鍛えられているのは根性ではなかった
「繰り返して見直す」の得点が下がっていった理由について、ひとつの見方が示されています。それは、繰り返しに見合うだけの直しが足りていなかったからではないか、というものです。つまり、同じことを何度もやるだけでは、途中から学びが止まってしまう。
医学生に鼻から管を入れる練習をしてもらった話があります。47人を2つのグループに分けて、片方には毎回の練習の後に指導者からその都度コメントをもらい、もう片方には5回練習した最後に1回だけまとめてコメントをもらう形にしました。
結果、毎回コメントをもらったグループの方が、動きの滑らかさで明らかに上回りました。練習の回数は同じ、時間も同じ。違ったのは、直しが入るタイミングの間隔だけです。
ここまで来ると、強豪校の部活で長時間練習していたこと自体が力の正体ではなさそうだと分かります。ひたすら量をこなす根性ではなく、
失敗した瞬間にすぐ直しが入る環境にいたかどうか。
が効いていたのかもしれません。
フィードバックの速さが差を生むメカニズム
もう少し年齢が低い子どもたちの話も見てみます。8歳から10歳の女子バレー選手32人を対象に、8週間の練習プログラムを行った話です。ボールの動きを見て体を合わせるタイミングを鍛える練習で、片方のグループには「今の動き、どうだったか」という結果をその場ですぐ伝える練習をしてもらいました。
すると、このグループはタイミングを合わせる精度がはっきり良くなり、しかも2か月経った後の再テストでもその精度が落ちていませんでした。練習をやめた後まで残るくらい、身についていたということです。
ここまでの話をつなげると、強豪校の部活が有利に見えるとしたら、それは根性強さではなく、やった直後にすぐ直しが返ってくる仕組みの中にいた時間が長かったから、と考えるとしっくりきます。
ただ、フィードバックなら何でも強ければいいというわけでもなさそうです。エリートのユースサッカー選手16人に、練習中に強く押し付けるような指示を出した場合と、穏やかに伝えた場合を比べた話があります。強く押し付けた方は、選手のきつさの感覚は上がったのに、実際のプレーの質はむしろ下がる傾向が出ました。
フィードバックは速いことに意味があるのであって、強く言えばいいわけではありません。

部活経験ゼロでも今日から再現できる練習設計
会議の場面に戻ります。上司から一言もらった直後、そのまま次のタスクに移ってしまうと、せっかくの直しの種が消えてしまいます。強豪校の部活にいた人が有利に見えるのだとしたら、それはこの「直後にすぐ拾う」動きを毎日繰り返していたからかもしれません。だとしたら、部活経験がなくても、同じ動きは今日から作れます。
まず、上司の一言をその場でメモしておくこと。頭の中だけで覚えておこうとすると、次のタスクに気を取られてすぐ消えてしまいます。紙でもスマホでもいいので、聞いた瞬間に一行だけ書き留める場所を決めておくと、それだけで拾える確率が変わります。
次に、フィードバックを待つのではなく、自分から取りに行くことです。「さっきのあれ、これで合ってましたか」と一言聞くだけで、相手が黙って評価を溜め込む時間を減らせます。強豪校の部活では、コーチが練習の合間ごとに声をかけてくれる場面が多かったはずですが、社会人になると誰も自動的にはやってくれません。だからこそ、自分から聞きに行く一言が代わりになります。
そして、振り返る時間と次の作業をする時間を、意識して分けておくことです。会議が終わった直後の5分だけ、次のタスクに手をつける前に「今のフィードバックをどう反映するか」だけを考える時間を作る。場所も机の上か、別のメモ帳かで分けておくと、頭の切り替えがしやすくなります。
強豪校の部活を経験したかどうかは、実はそこまで大事な分かれ目ではなさそうです。分かれ目になっているのは、失敗した直後にすぐ直しが入る仕組みの中にいたかどうか。だとしたら、その仕組みは今の仕事の中でも、自分の手で作り直せます。
※ 紹介した研究は医学生や若いスポーツ選手を対象にした小規模なもので、社会人の仕事に直接そのまま当てはまるとは限りません。フィードバックの速さが役立ちそうだという傾向を示すものとして読んでください。
出典: BMC Medical Education · https://doi.org/10.1186/1472-6920-11-101
BMC Medical Education · https://doi.org/10.1186/s12909-015-0286-5
europepmc.org · https://europepmc.org/article/MED/42353992
Journal of strength and conditioning research · https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28933710/