メンタル

強豪校の部活を経験した人としてない人の違い

強豪校の部活を経験した人としてない人の違い

この記事でわかること

  • 「動じない」に見える人の体の中で何が起きているか
  • 慣れて強くなるタイプと、我慢して溜め込むタイプの違い
  • 経験の有無に関係なく、プレッシャーの後にできること

⏱ 読了 約7分 / 🔬 根拠の信頼度: 低

会議で上司にがっつり詰められた直後、心臓はバクバクしてるのに、顔だけは涼しい顔してる。そういう人、まわりにいませんか。強豪校で厳しい部活をやってきた人に多い気がするやつです。でもあれって、本当に「動じてない」のか、それとも「動じてるけど隠すのがうまいだけ」なのか。今日はそこを、体の中で起きてることから覗いてみます。

強豪校出身者の「動じなさ」は本物か

 

会議で上司に詰められた直後のデスク。表情はいつも通りを保っているのに、心臓だけがものすごい速さで動いてる。手のひらがじんわり汗ばんでる。こういう瞬間、強豪校で厳しい練習や上下関係をくぐってきた人ほど、顔に出さないのが上手い印象があります。

でもここで一回立ち止まりたいんです。「動じてない」ように見えるのと、「本当に動じていない」のは、別物かもしれないということです。顔は演技できても、体の中まで演技できるとは限りません。

 

体の中の反応をのぞく手がかりのひとつが、心臓の鼓動の間隔のばらつきです。心拍は一定のリズムで打っているようで、実は一拍ごとに微妙に間隔が違います。このばらつきの大きさが、体を落ち着かせる方向に働く神経がちゃんと働いているかどうかを映し出すことがわかっています。

心拍が語る2つのタイプ:慣れ型と蓄積型

 

この心拍のばらつきを毎日近い時間に測り続けると、その人の「いつもの状態」と「今日だけ乱れてる状態」を分けて見られるようになります。一回だけ測っても、その日たまたま調子が悪いのか、普段からそうなのか区別がつきません。毎日測って初めて、普段の底が見えてくるんです。

ここから見えてくるのが、プレッシャーに強くなったように見える人の2つのタイプです。

  1. 慣れ型:同じような負荷を繰り返し経験して、反応が立ち上がった後、元の状態に戻るスピードが早くなったタイプです。負荷とその後の回復を、体がセットで覚えている感じです。
  2. 蓄積型:表面上は反応が鈍く見えるけれど、実は普段の緊張の底がずっと高いまま下がらず、休んでいるつもりでも回復しきれていないタイプです。

実際、厳しい環境で働く医師を対象に、本人が答える「しんどさ」のアンケートと、体につけた機械で測る毎日の心拍のばらつきを、同時に7日間追いかけようとする調査が組まれています。わざわざ両方を測ろうとしているのは、本人の自覚と体の反応が、ずれることがあるからです。「大丈夫です」と言っている人の体が、実は全然大丈夫じゃない状態のまま固まっていることがある、ということです。

 

ポイント

動じなさが本物かどうかは、顔ではなく「戻るスピード」で見えてきます。

経験者が有利な場面・不利になる場面

 

ここで、強豪校経験者に少し有利な話をします。自転車競技の選手を対象にした調べでは、その日その日の負荷と、積み重なった疲労の両方を心拍のばらつきで見ながら、負荷をかける時期と回復させる時期を組み立てていくやり方が使われています。つまり「追い込んだら、戻す」を体でワンセットとして覚えているんです。

強豪校の部活で、きつい練習の翌日に軽い練習を挟んだり、大会前に調整期間を置いたりした経験がある人は、これと似た感覚をすでに体に持っている可能性があります。プレッシャーがかかった瞬間、パニックにならずに「まあ、いつか収まる」という感覚で乗り切れるのは、実はこの経験の積み重ねかもしれません。急な負荷がかかった場面での立ち上がりの早さと、その後の落ち着き方は、経験者の方が持ち駒として多いように見えます。

 

ただし、これは裏返すと弱点にもなります。普段の緊張の底がずっと高いまま固定されていると、そこに追加の負荷が乗ったとき、逃げ場がありません。伸びしろが少ないんです。厳しい上下関係の中で「弱音を吐かない」が当たり前になっていた人ほど、蓄積型に寄りやすい可能性があります。

経験のない人はどうかというと、急な負荷には慣れていない分、最初の立ち上がりで大きく動揺しやすいかもしれません。ただ、普段の緊張の底が低く保たれていれば、回復に専念したときの戻りは早い可能性もあります。どちらが優れているという話ではなく、得意な場面が違う、というだけのことです。

経験者が有利な場面・不利になる場面

今日からできる「疑似ストレス耐性」の作り方

 

経験の有無にかかわらず、共通してできることがあります。それは、プレッシャーがかかった直後に、意図的に体を戻す時間を挟むことです。

会議室からデスクに戻ってすぐパソコンを開くのではなく、まず1〜2分、椅子の背もたれに体をあずけて肩の力を抜きます。目を閉じるか、視線をぼんやり床に落として視野を狭めるだけでも、頭の中の情報量が減って少し落ち着きます。息を吐く時間を吸う時間より長くすると、体を休める神経の方にスイッチが入りやすくなります。

 

もうひとつ効くのが、場所を分けることです。詰められた場所と同じデスクでそのまま次の作業に入ると、緊張が引き継がれやすくなります。給湯室や階段の踊り場など、一瞬だけ移動できる場所を決めておくと、そこが「戻る」ための区切りになります。

そして、毎朝同じタイミングで少しだけ自分の状態を確認する習慣も役に立ちます。難しいことをする必要はなく、起きてすぐ数十秒座って、心臓の動きや呼吸の速さをただ感じるだけで十分です。続けていると、「今日はいつもより底が高いな」という違いに、自分で気づけるようになってきます。

 

「動じない自分」を目指すより、「ちゃんと戻れる自分」を目指す方が、体には優しいやり方です。

強豪校の部活を経験した人の「動じなさ」は、場慣れと回復の型を持っている分、たしかに武器になりやすいです。でもそれが、緊張の底がずっと高いまま我慢しているだけなら、いつか無理がきます。経験のあるなしより大事なのは、プレッシャーの後に体を戻す時間を、自分で意図的に作れるかどうかです。

※ この記事で紹介した心拍のばらつきに関する知見は、強豪校経験者と未経験者を直接比較したものではありません。あくまで慢性的な負荷とストレス反応の一般的な仕組みから、両者に起こりうる違いを推測して書いています。

出典: Italian National Conference on Sensors · https://www.semanticscholar.org/paper/0730e7ade2e65da588b0fadb34bc7d2dd4aac0b5
BMJ open · https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40484420/
semanticscholar.org · https://www.semanticscholar.org/paper/043b59dc8ee2a6f6edb1b50481d10be7da9eb010

※医学的な診断・治療に代わるものではなく、効果には個人差があります。