
この記事でわかること
- 意味のない繰り返し行動は「意志の弱さ」より「環境の単調さ」のサインかもしれない
- 同じ空間・同じ景色が続くと、動物も人も同じ動きを繰り返しやすい
- 行動を叱る前に、目の前の1平方メートルを変えるという手がある
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夜、ベッドに入ってから、なんとなくスマホでを2周も3周も見返しちゃうことないですか。新しいことなんて何もないのに、指が止まらない。自己嫌悪しながらも、また開いてる。じつはこれ、動物園の動物が同じ場所をぐるぐる歩き続けたり、うんこを食べたりする理由と、けっこう近いところにあるかもしれません。
檻の中で生まれる『意味のない行動』
動物園の動物には、頭をゆらゆら振り続けたり、同じルートを行ったり来たりしたり、毛や羽を抜き続けたり、決まった形で水の中をぐるぐる泳いだりする姿が見られます。うんこを食べる行動もそのひとつです。どれも目的がはっきりしなくて、疲れそうなのに繰り返される。飼育されている動物の間でよく見られる動きなんです。
檻の外から見物客が覗き込むこと自体が、動物にとってはストレスの元になることもあるそうです。ひどくなると、自分の体を噛んだり傷つけたりすることもあって、それは人間で言う自分を傷つけてしまう行動とも比べられています。
意味のない繰り返しは、心の余裕がすり減ったサインとして体に出てくるということです。
刺激不足のサインは、まず繰り返しに出る
面白いのは、この繰り返し行動、放っておくと悪化するわけじゃなくて、環境を変えると減ることがはっきりしている点です。動物園の哺乳類を対象にした54件の記録をまとめて見てみると、そのうち57件、割合にして9割で、環境に工夫を加えた期間のほうが繰り返し行動が少なくなっていました。
工夫といっても大げさなものじゃありません。餌の隠し場所を変えるとか、遊べる道具を置くとか、そのくらいのことです。それだけで、ぐるぐる歩き続けていた足が止まったりする。
行動そのものを止めさせようとするより、その行動が出る手前の環境をちょっと変えるほうが、ずっと効くみたいです。これは脳の中の「探ってみたい」「気になる」という気持ちが、行き場を失ったまま出口を探し続けている状態、とも言えそうです。動物らしい行動をちゃんと発揮できる場があるかどうかが、鍵になっているようです。
あなたの1日にもある『狭い檻』はどこか
貧乏ゆすり、スマホの無限スクロール、同じ棚を意味もなく何度も開け閉めする。これ、全部「意志が弱いから」って片付けられがちですけど、動物園の話を知ったあとだと、ちょっと違って見えてきます。
ベッドの上、同じ体勢、同じ画面、同じ光。1日の終わりのあの時間って、実はものすごく刺激が足りない空間なんです。頭は起きてるのに、体は動けない。目の前の1メートル四方に、目新しいものが何もない。そういう場所に長くいると、脳は勝手に同じ動きを繰り返して、なんとか刺激を作り出そうとするのかもしれません。
会社のデスク、電車の中の定位置、ソファのいつもの角。自分の1日を振り返ると、意外といくつも「狭い檻」があることに気づきます。

環境を1つ変えるだけで消える癖もある
じゃあどうするか。ここで「気合で我慢する」って話にしたら、動物園の子たちと同じ檻に自分を戻すだけです。効くのは、行動を叱ることじゃなくて、行動が出る場所の条件をひとつ変えること。
- 寝る前にスマホを見る場所を、ベッドの上から椅子に移す
- 照明を落として、画面以外に何も見えない状態を作る
- 手元に何か触れるもの(本、ノート、温かい飲み物)を置いて、指の行き先を変えておく
どれも小さいことですけど、動物園で言えば「隠し場所を変える」「道具を置く」レベルの工夫です。9割方向いた効果が出ていたのも、これくらいの小さな変化の積み重ねでした。
ポイント
体の内側の話をすると、繰り返し行動は体の中の酸化のバランス(体の中の錆びのようなもの)とも関係している可能性が調べられ始めています。まだはっきりしたことは言えませんが、単に「気持ちの問題」では片付けられない体の状態が背景にあるかもしれない、というくらいには受け止めておいてよさそうです。
うんこを食べる動物を見て「変なやつ」で終わらせるのは簡単です。でも同じ場所に長くいすぎると同じ動きを繰り返すのは、動物も自分も変わらないみたいです。癖を叱る前に、まず目の前の1メートルを疑ってみる。それだけで、消える癖もあります。
※ この記事で紹介した繰り返し行動の仕組みは、動物園の動物を対象にした調査がもとになっています。人間の癖にそのまま当てはめられると保証するものではなく、あくまで環境と行動のつながりを考えるヒントとして読んでください。
出典: Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) · https://doi.org/10.5281/zenodo.7362442
Zoo Biology · https://doi.org/10.1002/zoo.20091
Journal of animal science · https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22110089/
europepmc.org · https://europepmc.org/article/MED/41191589