メンタル

人と比べることの重要性

人と比べることの重要性

この記事でわかること

  • 比べることを完全にやめるのが難しい理由
  • 上に比べるか下に比べるかで結果が真逆になる話
  • 比較相手を目的で選び直すという練習

⏱ 読了 約6分 / 🔬 根拠の信頼度: 中

会議のあと、同僚への評価コメントを聞いて、自分だけ何も言われなかった気がして落ち込む。帰り道、同期の昇進報告をで見て、なんとも言えない気持ちになる夜。誰にでもある話だと思います。「人と比べるのはやめよう」ってよく聞きますが、今回はちょっと逆の話をします。比べることには、ちゃんと使い道があるんです。

比べることを禁止すると何が起きるか

 

「人と比べない」って決めても、頭は勝手に比べにいきます。仕事の出来、給料、恋愛、子育て。数字にできないものほど、自分の中だけの基準では測れなくて、隣の人を見て初めて「自分はここにいるんだ」とわかることが多いんです。

SNSを開けば、比較の材料が向こうから飛んできます。誰かの近況、誰かの昇進、誰かの旅行先。見たくなくても目に入って、見た瞬間に自分の位置と重ねてしまう。

 

 

これは意志が弱いからじゃなくて、比べる材料が手元に来やすい場所を、自分が持ち歩いているだけです。

 

だから「比べない」という禁止は、たぶん最初から無理な約束です。比べること自体を消すより、比べ方を変えるほうが現実的だと思います。

比較には「上」と「下」で真逆の効果がある

 

中国の大学生1549人を対象にした調査では、自分より優れた人と比べる回数が多い人ほど、「悪く思われるかもしれない」という不安が強くなって、それが行き過ぎた頑張り(頑張っても報われない空回りの努力)につながっていました。とくに、自分のことを周りとの関係の中で決めやすい人ほど、この影響が強く出ていて、自分の考えを自分の中だけで決めやすい人は影響が弱めでした。

一方で、上に比べることには背中を押す力もあります。自分より上の暮らしをしている人を見ると、「自分も良くなれるはず」という気持ちや、「あの人に近づきたい」という感覚が生まれて、服や食事、住まい、旅行といった消費の意欲につながることも確認されています。

 

上に比べることは、伸びる力にもなるし、削られる力にもなります。二枚目の刃みたいなものです。

下に比べるとどうなるか。気分が落ち込んでいるときに、自分より状況が悪い人のことを思い出して「自分はまだ大丈夫」と気持ちを立て直す。これは日常のあちこちで自然に起きています。ただ、下に比べて安心するだけだと、その場の気分は戻っても、次に進む力までは出てこないことが多いようです。

基準がないと自分の位置は測れない

 

比較を「気分のジャッジ」として受け取ると、上に比べれば凹み、下に比べれば安心するだけの、感情の上がり下がりで終わってしまいます。でも比較って、本当はもっと使い道があるはずです。

 

自分の今の場所を知るための、ただのデータ集めとして使う発想です。

 

 

会議のあと、同僚への評価コメントを聞いて自分だけ何も言われなかったとき。それを「自分は劣っている証拠」として受け取るのと、「今の自分の立ち位置を教えてくれる情報」として受け取るのとでは、そこから先の動き方が変わります。同じ出来事でも、拾い方を変えれば使えるものになります。

基準がないと自分の位置は測れない

比較相手を選ぶという技術

 

SNSは、比較したい気分じゃなくても、上方向の比較材料をどんどん届けてくる装置みたいなものです。開けば誰かの近況が流れてきて、気づけば自分の位置と重ねてしまう。そこで受け取る感情や自尊心への響き方は、人によってかなり差があります。

だったら、比較相手を向こうに選ばせるんじゃなくて、自分で選び直す練習をしてみます。

  1. 今日は「伸びたい日」なのか「落ち着きたい日」なのかを、比べる前に決める
  2. 伸びたい日は、少し上にいる人を、具体的な一人だけ思い浮かべる。集団や全体を相手にすると、不安のほうが強く出やすいので、範囲を絞る
  3. 落ち着きたい日は、下に比べて安心する使い方は一時的なものと割り切って、そこから何かを始めようとしない

比較した直後の気分だけで、自分の価値を決めないでください。

 

帰り道に同期の昇進報告を見てしまったら、その場でスマホを閉じて、家に着くまで別のことを考える。比較の材料と、比較した後の感情を、少し距離を置いて扱うだけで、受け取り方が変わってきます。

比べることをやめる必要はありません。比べる相手と、比べる目的を、自分の手に取り戻すことが大事です。次に誰かと自分を並べたくなったら、まず「今日はどっちの比較を使うか」を決めてみてください。

※ 紹介した調査の一部は、中国の大学生や消費者を対象にしたもので、日本の職場やの使い方にそのまま当てはまるとは限りません。比較の効果には個人差が大きく、誰にでも同じ結果が出るわけではない点にも注意してください。

出典: Computers in Human Behavior · https://www.semanticscholar.org/paper/887dcee46752522361e0cbadb140754019e8f132
europepmc.org · https://europepmc.org/article/MED/42193503
Journal of Personality and Social Psychology · https://doi.org/10.1037//0022-3514.79.4.563
Asian Journal of Social Psychology · https://www.semanticscholar.org/paper/2c4575d371525cfaa89b54a9cbcd28f454afc735

※医学的な診断・治療に代わるものではなく、効果には個人差があります。