
この記事でわかること
- ゴールに近づくほどやる気が加速する理由
- 進んだ分を見せるか残りを見せるかで結果が変わる話
- 根性じゃなく目に見える形で進捗を作るやり方
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洗面所で歯磨き粉のチューブをぐっと押しつぶして、最後の一絞りを出そうとしたことないですか。残りが少なくなるほど、なんだか早く使い切りたくなるんですよね。今年立てた目標が、まだ全然進んでいないことに気づいた朝に、このチューブの感覚を思い出してみてください。
スタンプカードとチューブの共通点
コーヒーショップのスタンプカード、10個貯めたら1杯無料っていうやつ。あれ、9個目に来た瞬間から、なんだか通う回数が増えたりしませんか。ゴールが近づくほど、足が向きやすくなるんです。
飲食店のポイント制度を数字のモデルにして、進み具合ごとにやる気がどう変わるかを計算した人たちがいます。低い進み具合、真ん中くらい、高い進み具合で、動機の強さの伸び方を比べてみたら、真ん中を過ぎたあたりから伸び方が急にきつくなるという結果でした。ゆっくり上がっていたグラフが、後半で一気に立ち上がるイメージです。
これ、歯磨き粉のチューブと同じ動きなんです。半分残っているうちは特に何も感じないのに、残りが少なくなった途端「早く使い切りたい」「もう一絞りしたい」という気持ちが強くなる。目標も、進み具合が見えていれば同じ動きをする可能性があるんです。
「あと少し」が生む加速のメカニズム
なぜ真ん中を過ぎたあたりから急に伸びるのか。理由として挙げられているのが、得することへの感じ方と、損することへの感じ方の非対称さです。ゴールまでの距離が近くなると、「ここで止まったらもったいない」という損した感覚のほうが、「もう少し進んだら得だ」という感覚より強く働きやすいんです。
ポイント
つまり、真ん中までは「まあいいか」で済んでいたことが、後半になると「ここでやめるのはさすがに嫌だ」に変わる。これがチューブの最後の一絞りと同じ心の動きです。歯磨き粉の残りが半分あるうちは気にならないのに、残り少なくなると急に惜しくなるのと、目標の後半で急にやる気が出てくるのは、たぶん同じ理屈で動いています。
進捗が見えないと人はサボる
ここで一つ、ややこしいけど大事な話があります。進み具合を伝えるとき、「ここまで来た」という進んだ距離を見せるやり方と、「あとこれだけ」という残りの距離を見せるやり方、どちらがやる気を上げるかは、実は一定じゃありません。
目標に対する考え方が、まだ全体像しかつかめていないぼんやりした状態の人と、次に何をするかまで具体的に見えている人とで、効き方が変わるんです。ぼんやりした状態の人は、目標のちょうど真ん中あたりにいるとき、「ここまで来た」という進んだ距離を見せられたほうがやる気が出やすい。一方、具体的に見えている人には、進んだ距離を見せても残りの距離を見せても、大きな差がありませんでした。
面白いのは、この差が出るのは真ん中あたりだけで、始めたばかりのときと終わりに近いときには、どちらの見せ方でもあまり変わらなかったという点です。つまり進捗の見せ方が一番効くのは、一番だれやすい真ん中の時期。ここで進捗の手がかりが何もないと、人は静かに失速するということです。

残量を可視化する3つの方法
ここまでの話をまとめると、目標をチューブみたいに「残量が見える形」にしておくと、根性を使わずに、知覚のほうに動いてもらえる可能性があります。具体的なやり方を3つ置いておきます。
- カレンダーに×をつける。進んだ日を積み重ねて見せる形にすると、真ん中の時期にだれやすい人ほど効きやすいやり方です。
- 進捗バーを作る。棚の目標や仕事の締め切りを、あと何割で終わるかが一目でわかる線や図にしておく。
- 後半だけ「残り」を強調する。前半は「ここまで来た」を見せて、後半は「あとこれだけ」を見せる。チューブの最後の一絞りに近い感覚を、後半になるほど意図的に強めていくやり方です。
どれも、気合を入れ直すための道具じゃなくて、目に入るものを変えるだけの工夫です。目標の中身は何も変えなくていいんです。見え方だけ変えると、体のほうが勝手に反応してくれます。
歯磨き粉のチューブが最後だけ焦って絞られるのと同じように、目標も真ん中を過ぎたあたりから、見え方さえ整えておけば勝手に加速してくれる可能性があります。今日やることは、目標を頑張ることじゃなくて、目標の残量を見える場所に置いておくことです。
※ 紹介した内容は、ポイント制度の数値モデルや実験、目標の伝え方に関する実験室での結果によるもので、すべての目標や人に同じ効果が出るとは限りません。進捗の見せ方の効き方には、その人の考え方の抽象度など条件が関わっています。
出典: Journal of Hospitality & Tourism Research · https://doi.org/10.1177/10963480231226083
Journal of Consumer Psychology · https://doi.org/10.1016/j.jcps.2013.06.002