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毎晩のスマホ時間は、何に投資しているつもりなのか

毎晩のスマホ時間は、何に投資しているつもりなのか

この記事でわかること

  • 「もう見たんだから」がやめられなくなる理由
  • 時間への投資判断はお金より歪みにくいという意外な事実
  • 今この瞬間だけで判断し直す、夜の区切り方

⏱ 読了 約6分 / 🔬 根拠の信頼度: 中

ベッドに入って「あと5分だけ」でスマホを開いたはずが、気づいたら1時半。なんでやめられなかったんだろうって、朝の自分が毎回不思議に思う。実はそれ、あなたの意志が弱いんじゃなくて、脳がお金の計算と同じ回路で時間を計算しちゃってるからかもしれません。

「もう見ちゃったから」が発動する沈没コストの正体

 

投資の世界に、損切りできない人という言葉があります。株価が下がり続けているのに、もう40分見たんだから今さらやめられない、と持ち続けてしまう人のことです。これと同じ回路が、実はベッドの中のスマホでも動いています。

もう1時間近く見ちゃったから、もう少し見ないと元が取れない。そんな感覚に覚えはありませんか。すでに払ったものを取り戻そうとして、さらに時間を積み増してしまう。この現象には名前がついていて、沈没コストの罠と呼ばれています。

 

研究者たちは、この罠がお金だけでなく、時間や努力にも起きるのかを調べています。168人を対象にした実験では、投資したものが何かによって、この罠にかかりやすさが違うことが分かりました。

罠が最も起きやすかったのはお金で、次が時間、最も起きにくかったのは努力でした。

つまりスマホ時間は、株ほど強力に人を縛るものではないという可能性があります。それでも時間はお金の次に罠にかかりやすい対象です。なぜなら、時間もお金と同じように、失うと二度と戻ってこないという感覚を持ちやすいからです。

スマホ時間は株か、それとも損切りできない負債か

 

ここでちょっと意地悪な問いを立ててみます。あなたが夜な夜な積み立てているスマホ時間は、いったい何に投資しているつもりなのでしょうか。楽しさでしょうか、情報でしょうか、それとも誰かとのつながりでしょうか。

面白いのは、この罠を最も強く犯すのが大人で、子どもや動物のほうが、実は正しい判断をするという研究があることです。すでに払ったコストを気にせず、今この瞬間の価値だけで判断をやめられるのは、むしろ子どもの方だという逆説です。研究者たちは、これを大人が「もったいない」というルールを、必要ない場面にまで広げすぎているせいだと説明しています。

 

もう1つ、年齢による違いを調べた研究も参考になります。若い人ほど、失うことへの意識が強く働きやすく、年を重ねた人ほど、損と得を落ち着いて見比べられる傾向があることが分かっています。

若いからこそ、失うことへの感度が高くて、途中でやめる判断が難しくなりやすい。それは弱さではなく、脳の癖の話です。

スポーツの世界にも似た話があります。プロのアイスホッケーの世界では、ドラフトの早い順番で指名された選手に、その後の成績に関係なく多くの出場機会が与えられ続けるという傾向が確認されています。最初に大きく投資したから、今さら引けない。これは球団のフロントも、ベッドの中のあなたも、同じ心理の上に立っています。

スマホ時間は株か、それとも損切りできない負債か

今夜、途中で画面を閉じる1分ルール

 

ではどうすればいいのか。ここでよくある助言は「気合でやめる」ですが、それでは続きません。研究が教えてくれるのは、気合ではなく時間の区切り方を変えるという方向です。

ある実験では、参加者に自分の残り時間が短いと想像してもらうと、沈没コストの罠が弱まることが分かりました。しかもこの効果は、お金より時間を投資している場面でとくにはっきり出ています。つまり時間について考えるときは、これまで払った時間ではなく、これから残っている時間を意識するだけで、判断が変わりやすいということです。

 

これをベッドの中に持ち込むと、こんな形になります。

  1. スマホを開く前ではなく、途中の1分だけ画面から目を離す
  2. 「あと何分残っている」ではなく「これから見る5分に価値があるか」だけを考える
  3. すでに見た40分のことは、いったん忘れる

ポイントは、もう見た分を計算に入れないことです。

今夜すでに投資した時間は、今この瞬間の判断材料にはなりません。

 

それは、株で例えるなら「もう下がった分」を見て売買を決めないのと同じです。すでに沈んだコストは、これからの5分を面白くしてはくれません。

スマホ時間は、株のようにも、負債のようにも扱えます。今夜のあなたが問い直すべきなのは「もう何分見たか」ではなく「これからの5分に、まだ価値があるか」。その1分の問い直しだけが、明日の1時半のあなたを助けてくれます。

※ 紹介した研究はいずれも実験室や特定の集団を対象にしたもので、スマホ利用そのものを直接調べたものではありません。日常の感覚に置き換えて読んでください。

出典: International journal of psychological research · https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32612790/
Journal of Behavioral Decision Making · https://doi.org/10.1002/bdm.1781
Psychological Science · https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02138.x
Scandinavian journal of medicine & science in sports · https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33662153/
Psychological Bulletin · https://doi.org/10.1037/0033-2909.125.5.591

※医学的な診断・治療に代わるものではなく、効果には個人差があります。