
この記事でわかること
- 挑発的な言動が続く理由は「反応」という報酬にある
- 反応をやめると相手の行動がどう変わっていくか
- スルーを我慢ではなく技術として使う具体的な方法
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会議で皮肉を言われた瞬間って、頭の中がざわつきますよね。言い返すか、黙るか。その数秒のあいだに全部決めなきゃいけない気がして、結局カッとなって言い返しちゃう。でも実はこの数秒、相手の行動をこれからどうするかを決める、かなり大事な時間なんです。
皮肉を言われた瞬間、心臓がドキッとして、顔がカッと熱くなる。ここで言い返すべきか、黙って流すべきか。頭の中で何パターンも考えているうちに、結局その場の空気に押されて反応してしまう、みたいなことってありますよね。
実はこの数秒間にやっていることは、単なる我慢比べじゃありません。相手の行動を「これからも続けさせるか、やめさせるか」を左右する、けっこう重要な分かれ道なんです。
挑発は「注目」を求める行動である
攻撃的な言動をする人の中には、刺激を求める気持ちや、我慢しにくい衝動の強さが関係している人がいます。スペインの高校生822人を調べたところ、刺激を求める気持ちの強さと、衝動を抑えにくい傾向が、攻撃的なふるまいと関係していることがわかりました。
つまり挑発的な一言そのものが目的というより、その一言のあとに返ってくる相手の反応が目当てになっているケースがある、ということです。
動揺した顔、ムッとした声、言い返してくる言葉。どれも相手にとっては「刺激」であり、欲しかったものかもしれません。
反応するほど、その行動は続いていく
知的障害のある子どもたちの攻撃的な行動や自分を傷つける行動を減らす取り組みで、共通してうまくいったやり方があります。望ましくない行動には反応を返さず、そうでない時間には別の行動をきちんと認める、というやり方です。
攻撃的な反応が出なかった時間にはご褒美(パズルのピースやトークン、飴など)を渡し、攻撃が出た瞬間には短く「ダメ」とだけ伝えたり、ためたご褒美を失わせたりする。これを続けると、行動の頻度は元の水準よりずっと低いところまで下がりました。
病棟でも似たことが起きています。大声を出す・攻撃するという行動に短いタイムアウト(その場から一旦離す)を組み合わせ、望ましい行動にご褒美を出すというやり方で、行動はほぼゼロに近いところまで下がりました。
ポイント
無視をやめると、また元に戻ってしまうワケ
ここでおもしろいのが、その手続きをやめた途端、行動は元の水準まで戻ってしまったことです。そしてもう一度同じやり方に戻すと、また大きく下がりました。
つまり行動を抑えていたのは「無視した」という一瞬の出来事じゃなくて、「反応を返さない」という状態がずっと続いているかどうか、なんです。
会議で一度は黙っておいたのに、後から我慢できずに言い返す。これをやってしまうと、相手にとっては「粘れば反応が返ってくる」という学習になりかねません。

スルーを続けるための、具体的な「代わりの一手」
発達に特性のある子どもたちを対象にした実験では、問題行動への反応を完全に断たなくても、良いほうの行動への報酬の「長さ」「質」「タイミングの早さ」を、少しでも有利にしてあげるだけで行動が変わることがわかっています。特に効果が大きかったのは、この3つを組み合わせたときでした。
ここからわかるのは、無反応を貫くだけでは足りないということ。無反応の代わりに何をするかを、先に決めておくことが鍵になります。
会議の場面に当てはめると、こんな感じです。
- 皮肉を言われたら、まず一つ息を吐く
- 手元のメモや資料に視線を落とす
- 一拍おいてから、議題の話に戻る
これなら「我慢する」のではなく、「別の行動に切り替える」だけで済みます。
挑発に勝つのは、言い返す強さではなく、反応の代わりを持っている強さです。
反応しないことは、相手に屈することでも、我慢することでもありません。相手の行動をずっと支えてきた「反応という報酬」を、静かに止める作業です。今日、一つの挑発にだけ、数秒の間と、代わりにやることを用意してみてください。
※ 紹介した知見の多くは、発達に特性のある子どもや入院患者を対象にした行動への働きかけの記録です。職場の人間関係にそのまま当てはめられるとは限らないので、あくまでヒントとして受け取ってください。
出典: Journal of Applied Behavior Analysis · https://doi.org/10.1901/jaba.1974.7-313
Journal of Applied Behavior Analysis · https://doi.org/10.1901/jaba.1969.2-31
Journal of applied behavior analysis · https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21541145/
Frontiers in Psychology · https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.01447